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シナリオベースのシミュレーション:HDマップと実世界の交通データの組み合わせ

ADAS /自動運転車の分野で働いている場合は、おそらくHDマップ(3Dプロファイル、運転規則、車線の相互接続性などを含む実際の道路の仮想再現)に精通しているでしょう。

これらのHDマップの多くは シミュレーション ドメインに存在し、自動車メーカーやサプライヤーはそれらを活用して新しいADAS / AVシステムをトレーニングしたり、これらのドメインの機能の検証及び妥当性確認(V&V)を行います。ここで、ゼロから作成された一般的な架空のルートではなく、実際の道路のHDマップを使用する理由は非常にシンプルです。最終的には、システムを現実の世界で実用化する必要があるため、シミュレーションから始めて、できるだけ早く現実世界に合わせて最適化する必要があります。ご存知のとおり、現実の世界ではランダムに事象が発生し、全く同じ事象は起こりません。ですので、実際の道路を元に生成されたHDマップを使用すると、 一般的なデータセットではめったに見られない多くの状況に遭遇するかと思います。これが多くのケースで実際の道路を元に生成されたHDマップが活用されている理由になります。

ここまでは問題無いです。これらのHDマップを使用して、車線維持支援システムまたは車線逸脱警報システムを適切にトレーニングし、制限速度標識の検出やその他の多くのシステムを妥当性検証を行う事が出来ます。 ただし、マップに含まれているのは静的な地物情報のみで、このままでは周辺の交通参加者に反応する様なADAS / AVシステムへの活用については疑問が残ります。緊急ブレーキシステム、クロストラフィックアラート、またはアダプティブクルーズコントロールはすべて、車両周辺の他の車、自転車、または歩行者の行動に応じて、異なるパフォーマンスを発揮する必要があります。その為、シミュレーションでこのようなシステムを適切にトレーニングまたはテストするには、HDマップだけでは不十分であると言えます。

シナリオデータ:HDマップ + 交通流データ

前述したギャップはHDマップに交通流を追加し、シナリオデータとする事で解決出来ます。 

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シナリオデータは、静的レイヤー(HDマップ)と動的レイヤー(交通流)で構成されます。

おそらく、現実世界の交通流(動的)は、現実世界の地図(静的)よりも複雑と言えます。 一般的に単純と思われる交差点の交通状況を再現する場合においても、交差点で停車する車両の数などは殆どの場合再現する事は難しいです。 実際のドライバーは、それぞれが独自の運転スタイル、好み、非常に多様な経験、無限の複雑さを持つ人間です。 更には、機嫌の悪い日もあります。

繰り返しになるが、より効率的なシミュレーションを行う為には、シミュレーション実行環境をより現実世界に近いものとする必要があります。それを実現する為には、車両や歩行者などをキャプチャし、現実世界を仮想環境に取り込む他ありません。これにより生成されたデータはまさに現実世界のシナリオデータであり、現実世界のシミュレーション環境である。次に示す動画は弊社で生成したシナリオデータと現実世界の映像を並べて比較したものになります。

自車両が走行するルートに接続する全ての道路がシナリオデータ(HDマップ化して使用)として使用されるとは限りません。その為このシナリオのケースではいくつかの車両がHDマップの外で表示されたり、非表示となったりします。これは、特定のケースに関係する機能のみを再現する、またはよりまれなケースのテストを可能にする方法でデータを操作する代表的な一例です。 例えば、路上に停車している車、たとえそれがどこからともなく現れた車であっても、正確に識別する為には、フロントビュー/レーダーシステムを必要とするでしょう。これにより、実際のデータを使用して、より極端な状況や事故をシミュレートするにはどうすればよいかという次のトピックに進みます。

シナリオファジング:エッジケースを特定するために現実世界のデータを活用する。

システムの限界を知る場合、そのシステムのパフォーマンスを超えたシナリオをシミュレーションする必要があります。 1つの例としてイマージェンシーブレーキアシスト(EBA)を挙げると、現実世界でこのシステムが機能しなかった場合のデータを取得する事は非常に難しい事は容易に想像できます。その機能の評価用データの収録の為に、事故の発生を期待しながら運転を続ける事は現実的ではありません。 ここで、シナリオのファジングが必要になります。

シナリオベースのシミュレーション用に最適化されたツールチェーンを使用して、シナリオの特定の変数を選択し、それらを微調整する事が出来ます。 例えば、測定用車両の速度を数km/h上げる事も出来ますし、他の車両が前方にCut-inする距離を短くする事も出来ます。 これを少しずつ繰り返していくと、最終的にEBAが衝突を回避出来ないシナリオにたどり着きます。そしてその結果、(一般的に)エッジケースやシステム限界として参照されるシナリオの抽出が可能となります。 2つの変数(自車両の車速とCut-in車両との距離)の組み合わせにより、最小距離を実現する車速、そしてその逆も特定出来ます。その結果として、2つの変数に依存するエッジケースを複合的に発生させる事で、コーナーケースを再現する事が出来ます。

下記に一例を紹介します。前方の白い車両がレーンチェンジをする事で、更に前方に停車中の車両が現れます。左のシーンでは、緊急ブレーキを操作する為に十分な時間が残された状態でレーンチェンジされております。これに対し、右の変数を変更したシーンではレーンチェンジのタイミングを遅らせている為、システムが危険を識別し、処理を行うまでの時間が短くなります。

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左:現実世界を再現したシナリオ、右:パラメータを変更したシステム検証用のシナリオ

シナリオファジングを活用すると、シミュレーションの現実性を高めると共に、現実世界のデータを元に生成したシナリオの変数を段階的に操作してエッジ/コーナーケースを特定する事による関連性(トレーサビリティ)双方の便益を得る事が出来ます。

このトピックをより深く探求する為に、いくつかのビデオのサンプル(上のスクリーンショットが取られたものを含む)を確認されたい場合は、今年のIPG Automotive社主催「Apply&Innovate」に於けるプレゼンテーション「Edge Case Hunting in Scenario Based Virtual Validation of AVs」をご覧になることをお勧めします。

Field Operational Testing中のシナリオの収録

現実世界で対象のシステムに関連するシナリオの多数または、エッジケースに相当するシーンに遭遇する一つの機会はField Operational Testing(FOT)になります。 これはOEMやTier1サプライヤーもしくはそれらのパートナー企業が実施する何千kmにも渡る公道試験を指します。これらのテストドライブは、規制当局による最終承認の前提条件として、システムが公の場でテストするのに十分安全であると見なされたときに実行されます。

もちろん、FOTの段階でADASのパフォーマンスの問題を見つけることは珍しくありません。結局のところ、それが目的です。通常、これらは非常にまれに発生する問題であり、非常に特殊な状況(エッジ・ケースに近い場合など)で、または特定の操作時間後にのみ発生します。結局のところ、システムが大規模に現実の世界でテストされるのは、これが初めてということになります。

このような状況が発生した場合、それはシステムの妥当性確認や検証をしているエンジニアにとっての情報の宝庫です。これらのドライブ中に記録されたすべてのオンボード・データは、少しでも問題が有れば原因を特定し、エラーがあれば修正するために、可能な限り詳細に分析されます。 ただし、オンボードデータは、システムの「思考」が何を起こしたかを示すだけです。不検知または誤検知を探している場合(センサーデータ上などで)、このデータを実際に起こったことと照合する必要があります。

この目的のために、FOT中に収録されたシナリオを活用できます。テスト車両がHDマップと交通データを記録するように仕立てられている場合、正確な道路レイアウト、システム障害または障害が発生した時の正確な状況、正確な道路レイアウト、車両の正確な位置とポーズ、およびその時点での周囲の交通状況等を再現できます。

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車両に搭載されたシナリオ生成用センサーハードウェア

これらの「マイクロシナリオ」をシミュレーションで再生すると、FOT中に特定されたパフォーマンスの問題を取り巻く状況についてより包括的な見識がもたらされます。さらに、データをファジングすることで、無限の「もしも」の質問を扱いながら、エラーの正確な原因と重大性をさらに掘り下げて検討することができます。 


ご不明な点がある場合や、シナリオの活用方法についてご質問がある場合は、メールにてご連絡いただくか、ソリューションタブ内のシミュレーションのパートにある email or request a meeting with us. 


Author: Tom Dahlström, atlatec Gmbh

By Tom Dahlström

As a business developer, I'm a "matchmaker" between atlatec's HD map/scenario portfolio and the needs of automotive and mobility companies in ADAS and AVs. I try to keep on top of market and technology trends and enjoy sharing with other industry stakeholders.

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